早稲田大学男子ソフトボール部には古くから受け継がれている伝統の一つに「紺碧隊」がある。紺碧隊とは、全日本大学ソフトボール選手権大会(以下インカレ)の時のみ解禁される大応援団のことであり、この紺碧隊の後押しによりこれまでも数々のドラマを生んできた早稲田のインカレを語るうえで外すことのできない存在である。そんな紺碧隊の持つ力について述べたいと思う。
・単なる応援ではなく、恩返しの応援
インカレではどのチームも他の大会以上に応援に力を入れているが、紺碧隊は早稲田ソフトボール部の在り方そのものを表現したもののように感じる。練習から1球への集中力を高め、常に競争心をもって取り組み、一年間通してインカレの舞台に照準を合わせて各々が過ごしているソフトボール部。これは、あらゆる面での多くの困難を乗り越え、縁があり集まった部員一人ひとりが力を最大限発揮できるような環境作りが普段からなされているのだ。このように、多様性を認めつつ仲間と作り上げてきたインカレまでの苦しい一年間をメッセージとして表現しているのが紺碧隊であり、早稲田がインカレで爆発的な力を発揮する大きな要因なのである。
また、早稲田では四年生の力を大切にしているのが特徴だが、これと紺碧隊も実は大きく繋がっている。下級生のころから多くの経験をし、苦しみも喜びもたくさん味わってきた最上級生が自分のためではなくチームのために働き、苦しみ続けた一年間から解放されるのが最後のインカレであり、下級生が主体となる紺碧隊を通じて四年生に最高の晴れ舞台を用意することが下級生からの恩返しである。このように、チームの「勝ち」のための自己犠牲が「価値」だと考え取り組んできた一年間を表現しているのもまた紺碧隊なのである。
・会場の空気を「早稲田カラー」に染める
紺碧隊はコロナ禍で声出しが制限された数年を除き、主に2年生から選ばれる紺碧隊長が中心となって毎年行われてきているが、今年のインカレで紺碧隊長を務めた髙岡(法学部2年)は「紺碧隊長として活動した中で一番印象に残っていることは、試合前に行った校歌の指揮とエール交換で会場の空気が早稲田カラーに染まったことです。日頃の練習では感じなかったインカレの独特の空気間の中、自分の指揮で会場が湧いた記憶が鮮明に残っており、改めて伝統を受け継いだことへの責任感と緊張感を感じました。インカレの先陣を切る重要な役割を担い、チームの先頭に立って指揮を執った経験によって精神的な成長が感じられたとともに早稲田のソフトボール部の在り方についても胸に刻むことができました。」と語っており、伝統を繋いだことへの誇りとチームの勝敗をも左右し得る立場となった責任が垣間見られた。
紺碧隊長が先頭に立って一年間のチームを表現する紺碧隊には、自分たちのチームを鼓舞する力はもちろんのこと、観客を巻き込む力も持っている。その代のチームの雰囲気がそのまま表れるのが紺碧隊であるため、毎年応援のカラーは異なるが、チームとして濃い時間を過ごしていればいるほど見る者を惹きつける力が強く、チームが発揮する力も大きくなるのが紺碧隊でもあるため、来年のインカレの会場にいる人の中から一人でも多くの「ファン」を得られるような取り組みを進めていきたい。また、インカレの応援を紺碧隊の枠に収まらず、大きな輪にしていくための第一歩として、観客だけでなく大学ソフトボール界を巻き込むまでの影響力をもたらせたらと思う。そして、最終的にはインカレの応援を新たな次元に押し上げる先駆者となれるように今後とも精進していきたい。



